第1回 約物の名前

文字・数字以外の記号のことを印刷用語では全部ひっくるめて「約物」と呼びます.
ふだん何気なく使って,名前など気にしたこともないという方も多いかと思いますが,
出版・印刷の世界では約物をめぐって正確なコミュニケーションをする必要から,
ひとつひとつに名前がつけられています.

ごく常識的な名前から,詩的な名前まで,約物の世界をご紹介します.

約物いろいろ

「」 カギ,引っ掛け 一般には「鉤括弧」(かぎかっこ)と呼ばれますが,これだと少々長いので,略して「カギ」と呼ばれることが多いです.また,「鉤=物をかけるため先の曲がった金物」ということから「引っ掛け」と呼ばれることもあります.
『』 二重カギ カギが二重になっているので「二重カギ」です.
() パーレン よく「括弧,」「丸括弧」などと呼ばれますが,印刷の世界では「パーレン」と呼びます.これは英語の "parenthesis" (括弧の意)の略がさらに訛ったものです.
【】 すみつきパーレン くっきり目立つので,日常の文書作成で便利に使われる方も多いと思いますが,これにも名前があります.パーレンに角(すみ)を付けた形なので「すみつきパーレン」です.
[] ブラケット 英語の "bracket" がそのまま転用されて「ブラケット」と呼ばれます.
〔〕 キッコウ 形が亀の甲羅に似ていることから「キッコウ(亀甲)」と呼びます.
〈〉 やまがた 山括弧」または「やまがた(山形)」です.
不等号とよく混同されますが,全く別の記号です.
やまがた … 〈〉
不等号 … <>
! あまだれ ビックリマーク」.英名は「エクスクラメーション・マーク」ですが,これはなかなか咄嗟には出てきませんね.「感嘆符」と呼ぶのが一般的ではないでしょうか.その姿形から「あまだれ(雨垂れ)」というなんとも風情のある名前で呼ばれることもあります.
? みみだれ だれでも知っている「疑問符」「はてなマーク」「クエスチョン・マーク」あるいは「インターロゲーション・マーク」ですが,その形が耳に似ていることから「みみだれ(耳垂れ)」という呼び名も持っています.辞書を引くと,あまりきれいな言葉ではないのですが…….
・ なかぐろ なかてん」「なかぽつ」などさまざまに呼ばれていると思いますが,一般的には「なかぐろ(中黒)」と呼びます.
… 三点リーダー 印刷用語で「破線」のことを「リーダー」(英語の"leader")といいます.この約物は3つの点を一単位にしていることから「三点リーダー」と呼ばれます.点の数が2つの「二点リーダー」も存在します.
ー おんびき 前についた文字の音を引き伸ばす機能,またすっと一本線を引いた様子から「おんびき(音引き)」と呼ばれます.
ダーシ 英語の "dash" が訛ったものです.いかにも昔の訛り言葉といった感がありますが,現在でも大半の出版・印刷人がこの呼び方をとっています.これには,英語で同じ "dash" という呼び名を持つ「′」(ダッシュ,プライム)と呼び分けるという意味合いもあるようです.
二倍ダーシ 「二倍の長さを持つダーシ」すなわち「二倍ダーシ」です.
二分ダーシ 「二分の一の長さを持つダーシ」すなわち「二分ダーシ」です.
〜 波ダーシ よく使われる約物ですが,「波ダーシ」あるいは「波形」と呼ばれます.
BACK

約物,きちんと使い分けていますか?

たとえば……

パソコンで作られた文書で,よく下のような例を目にします.

「なのですが・・・・」 あるいは 「なのですが...」

口ごもったニュアンスを点の連なりで表現していますが,
前者は「中黒」が,後者は「ピリオド」が使われています.
メールや私的な文書であればこれでもよいでしょうが,印刷の世界では落第です.
この場合には「三点リーダー」(…)を使います.

「なのですが……」

紙の上にプリントアウトすると,「三点リーダー」を使った場合のほうがまとまりよく印字されるのが,よりはっきりと分かるでしょう.パソコン標準の変換辞書ではなかなかうまく出してくれない「三点リーダー」ですが,打ちやすい名前で登録しておくと便利に使えます.