東洋文庫は文京区本駒込にある東洋学の研究図書館で、東洋文庫ミュージアムは東洋文庫が2011年に開設した出版・印刷関係の博物館です。
展示物では、オーストラリア人のG.E.モリソン博士の東アジアに関する欧文の書籍・絵画等2万4千点あまりのコレクションをよみがえらせた「モリソン書庫」や国宝・重要文化財や浮世絵の名品を展示した「岩崎文庫」などが有名です。
「オリエントホール」では、100万冊に及ぶ東洋文庫の蔵書の紹介ビデオが閲覧できるほか、2階へ通じる階段下に世界中の言語で記された貴重な古書が展示され、来訪者はこれらの書物を手に取って閲覧することもできます。
そんな由緒ある博物館の展示物にも三秀舎の足跡を見つけることができます。
東洋文庫ミュージアム1階奥に位置する「オリエントホール」に展示中の『龍歌故語箋(りゅうかこごせん)』『雞林類事 麗言攷(けいりんるいじ れいげんこう)』です。
大正13年11月に発行されたこの2冊の朝鮮史に関する研究書の印刷は当時の三秀舎の手によるものでした(奥付写真)。
朝鮮古典語と朝鮮書誌・朝鮮史に関する研究書である『龍歌故語箋』と『雞林類事 麗言攷』は、明治44年に朝鮮総督府通訳官を退官し、帰国後に在野で朝鮮語の研究と朝鮮の歴史文化の研究を続けた前間恭作が大正13年に東洋文庫へ寄贈したもので、寄贈後に東洋文庫論叢として発表されました。2冊とも当時の歴史を知る上でも重要な役割を果たした書物でした。
『龍歌故語箋』の内容は国立国会図書館の近代デジタルライブラリーでも閲覧することができます。
<参考文献>
白井順「書簡を通して見た前間恭作と小倉進平の交流――『郷歌及び吏読の研究』
刊行の昭和四年を中心に――」(『東洋文化研究』15、2013年 3月)
<関連ページ>
・三秀舎116年の歩み
・三秀舎ブックラボ「東洋文庫ミュージアム」